アスベスト除去の実態 ~見分け方・除去工程・法令対応~

解体工事を進めるうえで、近年ますます重要視されているのが「アスベスト除去」です。アスベスト(石綿)は、かつて「奇跡の鉱物」として広く建材に使用されてきましたが、その健康被害が社会問題となり、現在では使用・製造・輸入が禁止されています。
しかし、過去に建設された多くの建物にはアスベストが残っており、解体工事ではその扱いが極めて重要となります。
今回は、アスベスト含有建材の見分け方から除去工程、さらに関係法令まで、解体現場のリアルな実態をご紹介します。
アスベストとは?なぜ問題視されているのか
アスベストは、極めて細かい繊維状の鉱物で、耐熱性・絶縁性・耐腐食性に優れていたため、1970~80年代を中心に、吹き付け材、保温材、建材(スレート、ボード、接着剤など)として広く使用されてきました。
しかし、アスベスト繊維が空気中に飛散し、それを吸い込むことで健康被害を引き起こすことが明らかになっています。主な病気には以下があります:
- 中皮腫
- 石綿肺
- 肺がん
これらの病気は潜伏期間が長く、数十年後に発症するケースも多いため、法的規制も強化されてきました。
どこに使われている?アスベスト含有建材の見分け方
アスベスト含有建材は、見た目では判断しづらいことが多く、解体前の調査が不可欠です。代表的な含有部材と特徴を見てみましょう。
よく使用されていた場所・部材
| 部材カテゴリ | 主な使用例 |
|---|---|
| 吹き付け材 | 天井・梁・柱など構造体表面 |
| 保温材・断熱材 | 配管まわり、ボイラーなど |
| 成形建材 | スレート、ケイ酸カルシウム板、ビニル床タイルなど |
含有の有無を調べる方法
- 設計図書の確認:施工当時の設計図書や建材リストが残っていれば、アスベストの有無を記載している場合があります。
- 目視+ヒアリング:材料の劣化状況や建築時期からの推測。ただし不確実。
- 分析調査:試料を採取して専門機関で分析することで正確な含有状況が把握できます(定性分析・定量分析)。
アスベスト除去作業の基本工程
除去作業は飛散防止と作業員の安全確保が最重要です。具体的には、アスベストの種類によって対応が異なりますが、一般的な工程は以下のとおりです。
1. 作業計画・届出
除去を始める前に、都道府県や労働基準監督署への届出が必要です(労働安全衛生法、大気汚染防止法などに基づく)。計画には、作業区域、作業方法、防護対策などを明記します。
2. 作業区域の隔離と養生
- 作業エリアをシートなどで密閉し、外部への飛散を防止。
- 負圧除塵装置(陰圧機)を設置し、空気の流出を抑制。
- 二重扉・セキュリティゾーン(クリーンルーム)の設置。
3. アスベストの除去
- 湿潤化して繊維の飛散を抑える。
- 手工具や専用のバキューム機器で慎重に除去。
- 破砕・粉砕を避け、静かに取り外すのが基本。
4. 廃棄物の処理
- 除去したアスベストは「特別管理産業廃棄物」として扱い、専用の密閉袋に詰めて処理。
- 適正な処理業者に委託し、マニフェスト(管理票)で処理状況を追跡。
関連する法令と遵守事項
アスベスト除去には複数の法律が関わっており、それぞれ遵守が求められます。
主な関係法令
| 法律名 | 主な規制内容 |
|---|---|
| 労働安全衛生法 | 作業環境の管理、作業員の健康保護 |
| 大気汚染防止法 | 飛散防止措置、除去作業の届出義務 |
| 建築物石綿含有建材調査者制度 | 解体・改修工事の事前調査が義務化(2022年~) |
特に2022年の法改正により、一定規模以上の解体・改修工事では、有資格者によるアスベスト事前調査が義務となりました。違反すれば罰則もあるため、業者にとっては厳密な対応が求められます。
アスベスト除去が与える解体工事への影響
アスベストの有無は、解体工事のスケジュールとコストに大きく影響します。調査や届出に時間がかかるうえ、専門の除去作業が入ることで工程が長引き、追加費用も発生します。
よくある課題
- 調査漏れによる工期の遅れ
- 届出ミスによる作業停止
- 除去費用の見積もり不足
これらを防ぐためにも、解体前の徹底した事前調査と、経験豊富な業者の選定が重要です。
まとめ:アスベスト除去は“安全と信頼”の鍵
アスベスト除去は、作業員の安全はもちろん、周辺住民や環境への影響にも直結する重要なプロセスです。知識・経験のあるプロによる正確な対応が求められます。
安全・確実な解体工事を進めるためにも、「アスベストの調査・除去」は欠かせない一歩です。