上張り用フローリングの施工実務――既存床を活かす重ね張り工法のポイント

フローリング工事の中でも近年依頼が増えているのが「上張り用フローリング(リフォームフロア)」による重ね張り工法です。既存床を撤去せず、そのまま上に薄型のフローリング材を施工するため、工期短縮・騒音や粉塵の軽減・コスト削減といったメリットがあります。
この記事では、工事会社・職人向けに、上張り工法の実務手順、現場での注意点、材料選びのポイントを約1700字でまとめます。
■1.上張り用フローリングとは?(特徴とメリット)
上張り用フローリングは、通常の12mm厚よりも薄い 3〜6mm前後 のリフォーム用フロア材です。
既存フローリングの上に“全面接着”で貼ることを前提としており、
- 撤去工事が不要
- 工期が短い(半日〜1日で完了する現場も多い)
- 室内粉塵・騒音が少なく、入居中でも施工しやすい
- 廃材がほとんど出ないため処分費も抑えられる
といった利点があります。
マンション・戸建て問わず人気ですが、特に 高齢者宅や賃貸物件の原状回復 との相性が良い工法です。
■2.上張り工法が可能かどうかの事前チェック
重ね張りは万能ではなく、下地状況によっては不向きな場合があります。
現場調査では以下の点を必ず確認します。
●① 既存フローリングが“平滑”か
- 膨れ、剥がれ
- 隙間の広がり
- 表面の浮き
- 歩行時の沈み
これらが大きい場合、上張りしても仕上がりに影響が出ます。沈みが大きい場合は合板増し貼りや張替え工事が必要です。
●② 床鳴りの確認
上張りでも床鳴りは完全には消えません。
鳴りの原因が「根太」なのか「合板」なのかを切り分け、可能な範囲でビス補強します。
●③ 建具や巾木との干渉
上張りで3〜6mm厚みが上がるため、
- ドアの開閉
- 玄関框の段差
- クローゼットのレール
- 巾木の隙間
これらを事前に確認し、必要なら敷居の削りや見切り材を追加します。
●④ マンションのケースでは管理規約
“重ね張り禁止”の規約がある物件もあるため必ず事前確認。
■3.施工手順(実務に基づく工程)
【STEP1】養生・清掃・既存床の下準備
施工面は油分・ゴミ・埃を完全に除去。
特に埃は接着不良の原因になるため、バキュームで丁寧に対応します。
既存フロア表面がワックス仕上げの場合は“剥離剤で除去”するか“サンドペーパーで軽く目荒らし”することが推奨されます。
【STEP2】不陸確認と部分補修
上張りフロアは薄いため、不陸(レベル差)が仕上がりに直に響きます。
- 床鳴り → ビス打ち
- 浮き → ビス固定
- 隙間 → パテ補修
- 表面割れ → エポキシ補修
必要最低限の下処理を行い、仕上げ材が確実に密着する状態を作ります。
【STEP3】割付・貼り始め位置の決定
基本は 部屋の長手方向 に合わせます。
ただし、既存フローリングが短手方向に伸びている場合は、上張り材は“方向を揃える”のが一般的。
割付のポイント:
- 出入り口側から貼る
- 壁際は5mm程度のクリアランス
- ジョイントは1枚ごとにずらす
- 光の入り方で見栄えが変わるため照明位置も考慮
【STEP4】接着剤の塗布
上張り用フローリングは 全面接着が前提 です。
使用する接着剤はメーカー指定品(一般的にはウレタン系)。
くし目ゴテで均一に塗布し、塗りムラやダマを作らないことが重要。
接着剤のポイント:
- 壁際は“はみ出し”に注意
- 塗布後はオープンタイムを守る
- 貼った後はゴムハンマーでしっかり圧着
【STEP5】フローリングの本張り
1枚目の角度をしっかり決めると仕上がりが安定します。
実務の注意点:
- 釘やタッカーは基本不要(使用すると薄板なので貫通の恐れ)
- 嵌合部の破損に注意し、無理に叩かず“均等な力”で締め込む
- 躯体音を防ぐため“浮き”がないよう再度圧着確認
薄型材は傷つきやすいため、施工中にキズを入れないよう養生しながら進めます。
【STEP6】見切り・巾木・建具調整
厚みが上がることで建具の擦りが発生することがあります。
必要に応じて以下を調整します。
- ドアの蝶番調整
- 下端カット
- 巾木の増し回し
- 出入口の見切り材取り付け
特にドア擦りは最もクレームになりやすい部分です。

■4.上張り材の選び方(プロ視点)
●耐水タイプ(キッチン・洗面・トイレ)
薄型でも耐水性が高く、原状回復や賃貸におすすめ。
●防音タイプ(マンション向け)
L-40/45などがあるが、厚みがあるため上張りには不向きな場合も。
●リアル木目の高意匠タイプ(戸建てのリフォーム)
“本物感”を求めるお客様向け。
価格帯が上がるため、サンプル提示が必須。
■5.工事会社が注意すべきポイント
- 床の沈みがある現場は絶対に上張りNG
- 既存床の不陸が3mm以上なら張替え推奨
- 接着剤の量をケチらない(不良施工の原因)
- 入居中の家具移動の段取り
- 畳との取り合いは見切り材で段差調整
- マンション規約の確認
上張りは「簡単に見えて失敗が目立ちやすい」のが特徴です。
薄板だからこそ下地の不陸や鳴りを拾いやすく、調査段階での判断力が非常に重要になります。
■6.まとめ
上張り用フローリングは、時間とコストを抑えながら仕上がりの美しさを実現できる優れた工法です。
ただし、既存床の状態によっては向かないケースもあるため、工事会社としては
- 正確な現場調査
- 適切な下地補修
- 接着剤の仕様遵守
- 建具クリアランスのチェック
これらを確実に行うことで、長く安心して使える床を提供できます。