畳の表替え・新調工事の基本と実務ポイント

―― 調査・採寸・仕上げで失敗しないための工事ガイド**
畳工事は「表替え」「裏返し」「新調(畳交換)」の3種類がありますが、実際の現場では状況に合わせた判断が重要です。特に、入替え後の寸法不良・段差・隙間などはクレームにつながりやすいため、工事会社としては調査・採寸から搬入設置までの精度が求められます。ここでは、初めて畳工事を扱う工事会社でも理解しやすいよう、基本知識と実務のポイントを整理します。

■ 1. 畳工事の種類と判断基準
● 表替え(もっとも一般的)
畳床(芯材)はそのままに、畳表と畳縁を張り替える方法。
・耐用年数:5〜10年
・メリット:比較的安価で、見た目も新品に近い
・判断基準:畳床がしっかりしている場合に採用
● 裏返し(意外と知られていない)
張られている畳表をひっくり返して再利用。
・耐用年数:3〜5年
・メリット:コスト最安
・注意点:日焼けが強い場合は不可
● 新調(畳交換)
畳床+畳表をすべて新しくする工法。
・耐用年数:10〜20年
・メリット:段差解消・断熱性能向上
・判断基準:畳床の破損・湿気・カビ・弾力の低下がある場合
施工提案時には、床の状態・お客様の予算・使用目的(和室・茶室・宿泊施設など)を踏まえて最適な工法を提示すると評価されます。
■ 2. 現地調査で確認すべきポイント
畳工事で最も重要なのは「採寸精度」と「下地確認」です。
【① 寸法の測定】
畳には規格寸法があります(本間・京間・江戸間など)が、実際の現場は手作り寸法が多く、そのままでは合いません。
ポイント:
- 縦×横×厚みを1枚ずつ測る
- 部屋の歪み(長方形でないケース)を必ず確認
- 建具とのクリアランスをチェック
※1枚でも寸法を誤ると隙間・浮き・段差の原因に。
【② 下地の状態】
- 床板の沈みや腐食
- 湿気・カビ
- 白蟻跡
- 下地と畳の段差
床が弱い場合、畳交換だけでは改善できず、床補修が必要となることもあります。
【③ 搬出入の経路】
- 階段幅
- 玄関・廊下の曲がり
- 家具移動の必要性
- 養生範囲
アパートなどは特に搬出入のしやすさを確認しておくとトラブル防止につながります。
■ 3. 畳材料の選び方(工事会社が押さえるポイント)
● 畳床(芯材)
- 藁床:高級・調湿性が高い・重い
- 建材床(インシュレーションボード+発泡材):軽量・安定・価格が安い
一般住宅や賃貸は建材床が主流。旅館・高級和室は藁床が評価される傾向。
● 畳表(ゴザ)
- 国産い草(熊本産):耐久性が高く色が良い
- 中国産い草:安価だが耐久性に差
- 和紙表・樹脂表:退色に強く、傷が付きにくい
お客様の用途に合わせて素材の提案ができると信頼につながります。
■ 4. 工事の流れ(実務手順)
● ① 現地調査・採寸
1枚ずつ採寸し、既存畳の反り・傷みも記録。
家具移動が必要な場合は別途費用として説明。
● ② 畳の搬出
室内・廊下・エレベーターなどをしっかり養生。
畳は体積が大きいため、搬出経路の確保が重要。
● ③ 工場での加工
表替えの場合:畳表・縁を張り替え
新調の場合:床の加工 → 表張り → 縁付け
精度良く仕上げるため、現場寸法が命。
● ④ 搬入・設置
畳の収まりをチェックしながら微調整。
- 隙間の有無
- 建具の開閉
- 段差確認
畳同士の「噛み合わせ」を丁寧に行うと仕上がりが格段に良くなる。
● ⑤ 完了確認
最後に全体のレベル確認と掃除。
家具戻しがある場合はキズ防止シートで対応。
■ 5. よくあるトラブルと対処法
| トラブル | 主な原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 隙間ができる | 採寸ミス・部屋の歪み | 再調整 or 追加加工 |
| 畳が浮く | 下地の不陸・畳床の反り | 下地補修・削り加工 |
| カビ | 湿気・通気不足 | 防湿シート・換気提案 |
| 色ムラ | い草の品質 | 事前説明・グレード提案 |
畳は自然素材ゆえ「完全均一」に仕上げるのは難しいため、事前説明もクレーム回避の重要ポイント。
■ 6. 工事会社が利益を守るポイント
- 採寸・搬出入・家具移動などの手間を見積に反映
- 搬出入の距離や階段の有無もコストに影響
- 畳材料のグレードは選択肢を用意し説明する
- 下地不良は追加工事として明確化
- 工場加工業者との連携を密にする
畳工事は「安く見られがち」ですが、手間と加工精度が求められるため、適正価格で受注し、作業量を正確に反映した見積りが重要です。
■ まとめ
畳の表替え・新調工事は、採寸・床確認・搬出入など、細かい作業が多く、仕上がりの差が出やすい工事です。正確な調査と丁寧な設置調整を行うことで、クレームを防ぎ、リピートにつながる品質を提供できます。
和室文化が続く限り、畳工事は確実に需要がある分野です。
工事会社としては「丁寧な調査」「提案力」「精度の高い段取り」で差別化し、利益を確保できる工事とすることが可能です。