空調設備工事の役割と基本構造

〜快適な空間づくりを支える見えない技術〜

私たちが日常を過ごす住宅やオフィス、商業施設、病院、学校、工場など、あらゆる建物で「快適さ」を実現する上で欠かせないのが空調設備です。夏は涼しく、冬は暖かく、さらに換気や湿度管理なども担うこの設備は、私たちの暮らしの質を支える大切な存在です。

今回は、管工事の中でも「空調設備工事」にスポットを当て、その役割や基本構造、主な施工内容について解説していきます。


目次

1. 空調設備工事とは?

空調設備工事とは、建物内の温度、湿度、空気の清浄度、換気などを適切に保つための設備を設置・調整・保守する工事です。「空調」とは、「空気を調整する」と書くように、単に冷暖房を行うだけではなく、居住空間の空気環境を総合的にコントロールする役割を担っています。

具体的には以下のような要素が含まれます。

  • 冷暖房設備(エアコン、ヒートポンプなど)
  • 換気設備(排気ファン、全熱交換器など)
  • 加湿・除湿設備
  • 空気清浄設備(フィルター、集塵装置など)
  • ダクトや配管の敷設と接続

これらを建物の規模や用途、地域の気候条件に合わせて最適に設計・施工するのが空調設備工事の仕事です。


2. 空調設備の種類と特徴

空調設備にはさまざまな種類があります。建物の規模や用途、予算によって最適な方式が選ばれます。ここでは代表的な空調方式を紹介します。

● ルームエアコン(個別方式)

家庭用や小規模オフィスなどに使われる最も一般的な方式です。室内機と室外機で1セットとなり、個別の部屋ごとに設置します。

特徴:

  • 初期費用が安い
  • 設置が比較的簡単
  • 部屋ごとに温度調整が可能

課題:

  • 部屋数が多いと設置台数が増え、メンテナンスが煩雑
  • 室外機の設置スペースが必要

● セントラル空調(集中方式)

中規模以上のオフィスビルや商業施設に多い方式で、1つの大きな空調機(チラーやAHUなど)で全体を制御し、各室にダクトで空気を送る仕組みです。

特徴:

  • 全体を一括管理できる
  • 外観がすっきりする
  • 高度な空調管理が可能

課題:

  • 初期コストが高い
  • メンテナンスに専門性が求められる

● GHP・EHP(業務用マルチエアコン)

中〜大規模な建物で使われる、複数の室内機を1台の室外機で制御できるシステム。GHPはガスエンジン駆動、EHPは電気モーター駆動。

特徴:

  • エネルギー効率が高い
  • 自由な室内レイアウトが可能
  • IoT連携による運用も可能

3. 空調設備の基本構造と構成要素

空調システムは「空気の流れ」と「熱のやりとり」を制御するため、主に以下のような構成要素で成り立っています。

1. 室内機・室外機(冷媒回路)

  • 室内機:冷暖房された空気を室内に送る装置。ファンや熱交換器を備える。
  • 室外機:冷媒を圧縮・放熱する装置。外気と熱を交換する役目。

この2つは銅管などの冷媒配管でつながれており、冷媒(フロンなど)が内部を循環します。

2. ダクト・配管類

  • 空気ダクト:中央空調の場合、空調機から各部屋へ空気を運ぶための管。スパイラルダクトや角ダクトなどがある。
  • 冷媒配管:室内機と室外機をつなぐ銅管。
  • ドレン配管:結露水を排出するための配管。

3. 換気設備

  • 排気ファン全熱交換器などが設置され、空気の入れ替えを行います。最近では**熱回収換気(全熱交換器)**が省エネの観点から注目されています。

4. 制御機器(コントローラ・センサー)

  • 各部屋の温度や湿度をモニターし、自動で運転を制御する装置。近年ではIoT対応のシステムも増えています。

4. 空調設備工事の流れ

空調設備工事は、新築・改修を問わず、以下のようなプロセスで進められます。

① 事前調査・設計

  • 建物の用途や間取り、使用人数などを踏まえ、必要な能力や配置を検討。
  • 図面作成(配置図、系統図、ダクト図など)
  • 設計段階で他業種(電気・内装など)との調整も行います。

② 墨出し・架台設置

  • 設置位置を現場で正確にマーキング(墨出し)。
  • 室外機や空調機、ダクトなどの支持金具や架台を設置。

③ 機器設置・配管施工

  • 機器本体の取り付け(室内機、室外機、ファンなど)。
  • ダクト・冷媒配管・ドレン配管の接続。
  • 必要に応じて断熱材や防露処理も実施。

④ 電気接続・試運転

  • 制御盤やセンサーなど電気系統の接続。
  • 試運転を行い、動作確認・温度調整・漏れチェックを実施。

⑤ 引き渡し・メンテナンス説明

  • 使用方法の説明、定期点検の案内など。
  • 保守契約やIoT監視サービスを提案する場合も。

5. 空調設備工事の注意点と課題

空調設備は建物の中でも目に見えにくい設備であるため、計画段階から施工まで細やかな配慮が求められます。以下のような注意点があります。

● 他工種との干渉

電気工事・配管・天井内装などとの取り合いが複雑になりやすく、施工前の調整が重要です。

● 結露・漏水の防止

冷媒管やドレン配管に不備があると、天井や壁からの水漏れにつながるリスクがあります。

● メンテナンススペースの確保

後々の点検や清掃がしやすいように、機器の設置位置に十分な作業空間を確保する必要があります。


6. 今後の動向と新技術

空調業界は今、省エネ・環境対応・IoT化といった流れの中で進化を続けています。

● ZEH・ZEBへの対応

住宅やビル全体のエネルギー消費を抑えるため、高効率な空調機器の導入が進んでいます。

● IoT対応空調機器

スマホやタブレットでの遠隔操作や、使用状況に応じた自動運転が可能な機器が普及しています。

● CO2削減・自然冷媒の採用

フロンの代替として、二酸化炭素やアンモニアなど環境負荷の低い冷媒が開発・実用化されています。


まとめ:空調設備工事は「見えない快適」をつくる仕事

空調設備工事は、私たちが快適に過ごすために不可欠な「空気の質」を支える仕事です。普段は見えないところで活躍する技術ですが、その精密さと工夫の積み重ねが、居心地のよい空間を生み出しています。

施工の正確さ、他業種との連携、将来を見据えた設備選びなど、求められる知識と技術は幅広く、まさに「設備のプロフェッショナル」といえる分野です。

次回は、設計段階で重要となる「図面の読み方と配管ルートの設計」について詳しく解説します。空調設備を支える“設計の目線”を学んでいきましょう。

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